「超人ロック」シリーズ

「超人ロック」は、不老不死のエスパーであるロックを主人公に、2000年近くにわたる長い歴史を描いた大河SFコミックです。
作者の聖悠紀(ひじり ゆき)氏が高校生の頃、なんと1967年から描き続けられており、現在の日本コミック界では最古の部類に入る長寿作品でもあります(ただし初期は同人誌で発表されており、商業誌連載が始まったのは1978年だそうです。)

超人ロックの歴史観

超人ロックの物語には年表が用意されており、現在ではおよそ1800年にわたる長大な歴史が記されるものに成長しています。
この年表は物語上はさらにいくつかの時代に区切ることができ、宇宙進出前史の時代、地球政府による統治時代、植民惑星が独立し結成した銀河連邦の時代、銀河連邦の崩壊と人類史上最悪の戦争の時代、戦争を平定して生まれた銀河帝国の時代、新しい銀河連邦の時代、と進んでいきます。

かつて少年キング誌上で連載されていたときは「超人ロックは年表を元に描かれている」とうたわれていたそうですが、実際には後から後から設定を継ぎ足し、描かれたエピソードを年表へ当てはめていった、というのが正しい、ということです。
このため看破できない矛盾も少なからず存在しますが、作品世界の長い歴史はまさに激動と言えるドラマに満ちており、読者を惹き付けてやみません。
どんな英雄も死に、どんな幸福も、どんな平和も長続きはしない。
極めてドライで殺伐荒涼とした歴史が展開する作品なのですが、そういう世界だからこそ、登場人物達の人間味や家族愛、恋愛、血族や国家との結びつきなど、暖かく時には熱い人間性が光ります。

人間らしく生きるということ

超人ロックは非常に長い期間に渡って描かれており、エピソードの総数は膨大なものがあります。
作中での時代によってロック達が生きる世相や環境は激変していますし、エピソードごとにかなり作品のカラーも異なるのですが、しかし初期から現在に至るまで、一貫したテーマのようなものは貫かれています。
それが標題にした「人間らしく生きること」です。
比較的初期のエピソード「魔女の世紀(ミレニアム、と読みます)」のラスト近くには、このテーマそのものをはっきりと語る場面がありました。

「魔女の世紀」は、地球に置かれた中央政府が銀河に広がる植民惑星を統治していた時代のエピソード。
最年少で軍情報部の長官となった「リュウ・ヤマキ」が、のどかな牧場で過ごすロックのもとを訪ねる場面から始まります。
ストーリーは、地球政府を倒して理想郷「ミレニアム」の実現を目指す「レディ・カーン」と、彼女の手足となり戦うエスパー達を相手に、ロックやヤマキが奮闘するというもの。
レディ・カーンはロックを最大の障害と考え、十数年にわたる遠大な計画を立てていました。ロックを倒すためだけに「道具」として扱われるエスパー「ジェシカ」が、計画の一環として記憶を失わされヤマキと恋に落ちます。ジェシカは「エスパーの超能力を分解する」エスパーであり、ヤマキに近づくことでロックとの接触をもち、そこでロックを倒すという計画のためだけに両親を(ご丁寧にもロックの姿に変奏した殺し屋によって)殺され、レディ・カーンの持つ財団の学校で密かに超能力を訓練されていたのです。
一方のロックは「コーネリア」というエスパーと出会い戦います。コーネリアもまたレディ・カーンの元に集った「闘士」の一人であり、ミレニアムの理想を実現するために「道具」として生きることを受け入れたのです。
ロックは訴えます。
「道具」であることをやめて「人間」として生きろ。
そしてミレニアムの欺瞞が暴かれたとき、コーネリアのとった行動とは・・・まあネタバレしちゃうのでこの辺にしておきまして、このように「人間らしく生きる」ということが、「超人ロック」の究極のテーマとしてどのエピソードの根底にも流れていると思います。これは何よりもロックの生き方、行動にも現れているのです。

最初に書いた通り、ロックはあろうことか不老不死のエスパーです。彼の超能力の最も特徴的なものは「再生」。肉体が歳をとっていき限界を迎えると細胞がどんどん若返っていき、赤ん坊の状態から再び成長を始めていきます。
その「再生」を何度も何度も繰り返し、ロックはすでに何千年と生きているのでしょう。しかし、その人生はもちろん平穏なものではありません。時代によって様々な勢力があり、ロック達「エスパー」は時代に翻弄されていきます。
時には政府や軍隊の「道具」として、時には世に仇為す害虫として(もちろんこれは偏見)、時には圧制をうち倒す英雄として。
圧制に立ち向かうために武器を取り積極的に戦争を戦うロック。
別の戦争では、絶望的な状況の中で一人でも多くの人を救おうと奔走するロック。
ロックは「超人」でありながらけして万能ではなく、取り返しの付かない失敗をすることもあります。
常に歴史を動かしてきた「超人」でありながら、同時に時代に翻弄され続ける「人間」ロック。
どんな時も希望を捨てず、「超人」と呼ばれるほどのずば抜けた力を持ちながらそれに流されず、誰よりも人間らしく生きようとするロックの姿は、時代を超えて読者に訴える力を持っていますね。
単行本も多くエピソードが独立しながらも連作になっていたりして、なかなか手を出しづらい漫画ではありますが、ツボにはまると一生ものの宝です。ぜひ探して読んでみて下さい。

主な単行本

  • 少年画報社ヒットコミックス:全38巻(絶版)
  • 少年画報社ヤングキングコミックス:「冬の虹」全4巻
  • スコラ・バーガーSCスペシャル:全19巻(ヒットコミックスの復刻、絶版)
  • スコラ・バーガーSCスペシャル:「ブレイン・シュリンカー」(絶版)
  • ビブロス・ビブロスコミックス「聖者の涙」全3巻(絶版)
  • ビブロス・MEGUコミックス「猫の散歩引き受けます」「オメガ」ほか(絶版)
  • ビブロス・コミック文庫全27巻(絶版)
  • SG企画単行本・「ニンバスと負の世界」「コズミック・ゲーム」ほか全5巻

    ※2006年3月にビブロスが倒産してしまったため、一気に絶版が増えました・・・・

  • 作者は聖悠紀。「超人ロック」は連載した雑誌が無くなるのでとみに有名。出版社も三件潰れています(^^;

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