東方妖々夢 -Perfect Cherry Blossom-

東方プロジェクトは、サークル「上海アリス幻楽団」が製作するPC向け同人シューティングゲームです。
非常に有名なシリーズですが、恥ずかしながら名前しか知らない状態が続き、自分はずっといわゆる「ギャルゲー」だと思って興味を持たずにおりました。
そんなわけでファン歴は1年ほどと、かなり浅い方と言えるでしょう。
STGだと知ってプレイする機会を得た訳ですが、想像を遙かに超えてどっぷりとハマってしまい、振り返るとここ数年で一番の衝撃を受けた作品となったと思います。

弾幕シューティングは大の苦手です

えーと、まず一言だけ言わせてもらうとですね、このゲーム難しすぎます(笑)
いやほんと、多くの局面はパターン化で何とかなるらしいですけど、正直言って、僕には人種的に無理です。パターンが分かっていたところで、スピードと弾密度、そして要求される精密操作についていけないので意味が無く、「決めボム(避けられない攻撃が来たら問答無用でボムを撃つ)すりゃいいじゃん」、と言われても、決めボムしたところでボスは落ちてくれないため、次に来た弾で死にます。ボムを使い切ってもまだ落ちてくれないボスもいます。

「そんなもん練習あるのみだゴルァ」と思われるかも知れませんが、「ノーマル」をやるのに何百回もの練習を要求されるゲームって純粋にどうなんでしょう・・・・。
まあ、そこまで「難しい!」と思いながらも、僕も既に数百回にも及ぶプレイ回数を重ねているわけで、それほどまでに面白いゲームなのは間違いないと思います。ちなみに、700回近くプレイしてノーマルを3回(4回かも)ノーコンティニュー出来た程度の腕前。人より相当ヘタクソなのは確かですね(^^;

へたれシューターにも魅力的

さて、そんなわけで、プレーヤーとして腕前はド底辺なわけですが、それでもこのゲームが好きなのは何故なのか?と言いますと。

・・・という感じです。難易度以外は全て好き、と言っても良いくらいですね。
このゲームは「幻想郷」という架空の世界を舞台にしています。架空と言っても、設定上はこの日本のどこかに存在することになっているのですが、おおよそ明治時代の初期の頃に、結界によってこの世界から切り離された場所が幻想郷なのだそうです。
日本のどこかの山奥にひっそりと存在し、「暗闇を本気で恐れる程度の」文明レベルで、本物の妖怪が跋扈し時には人間を喰らう世界。そんな世界を舞台に、空を飛ぶ不思議な巫女やら、自称普通の魔法使いやら、時間を止めてナイフを投げつける(DIO様?)メイドさんやらが活躍する、摩訶不思議なSTGです。
こんなちょっと変な世界で、日本人の心に妙に響く印象的なストーリーが繰り広げられます(でもSTG)。

個人的に、このゲームの一番のポイントは、美しく練り上げられたストーリー。おおよその出だしはこんな感じです。

その年、幻想郷ではいつまで経っても春が訪れなかった。
そんなある時、止むことのない吹雪の中に、何故か桜の花びらが混じっていることに気がついた・・・・・

どうでしょう。
真っ白な牡丹雪に混じって桜の花びらが降りしきる。想像してみると、なんとも雅で印象的な光景ではないでしょうか?
この終わらない冬の原因を突き止め、幻想郷に春を取り戻すため、三人の主人公が立ち上がります。で、彼女らを操作して美しいステージを攻略し、地獄のような弾幕を克服して(笑)エンディングを目指すわけです。
空から降ってくる謎の桜の出所を求めて、主人公達は次第に空高くへと飛んでいきます。そしてついに吹雪の黒雲をも突き抜けていったとき、彼女たちは(プレイヤーも)驚くべきものを目にするのです。
さらに、その先に待っていたのは・・・。

ステージの演出が非常に凝っており、素晴らしい音楽と絶妙にシンクロした展開で、いやが応にもテンションが高まります。特に、全6ステージの折り返しを過ぎたステージ4以降は画面そのものが持つ物語性も一気に高まり、ドラマティックなステージ展開に引き込まれていきます。
また、すべてのステージに題名が付けれていること、その題名の表示の仕方なども見逃せないポイントですね。

弾幕そのものも特筆すべき要素の一つです。このゲームではボスの攻撃に「スペルカード」というものがあり、要するに弾幕攻撃に名前を付けたというものなのですが、これが非常に素晴らしい。
スペルカードを花火に例えた方がおりまして、東方の作者である上海アリス幻楽団・ZUN氏が「その通りです」と言われていました。東方の弾幕はそれ自体が美しくデザインされ、さらに名前とデザインによって物語性の中での演出として大きな意味と役割を持っています。
その由来を調べてみるとやたらとディープな世界があったりして、「ううむZUN氏恐るべし!」と唸ってしまうのです。
ゲームをプレイしている時には、見とれてしまうと即死確定ですから(笑)気付かないこともあるのですが、リプレイ機能を使って見ていると弾幕のデザインが持っている意図を感じ「なるほど!」とか「スゲエ!」と叫びそうになることも少なくありません。
もちろん、攻略対象としての弾幕という見方をしてもたぶん一級品です。

今度は音楽について。
ピアノやトランペット、ストリングスをメインにした華麗で印象強いメロディを、軽快・奔放なリズムに乗せたBGM群は極上の出来映えです。
メインに使用される音色からしてもSTGのBGMとしては珍しい感じがしますが、ノリノリでそれでいて美しく、幻想郷の美しい情景を余すことなく伝えてくれる曲、緊張感あふれる戦闘シーン、幽玄で不吉な予感に満ちた異世界のテーマ、豪華にして典雅で同時に身を切るような悲痛な空気をまとった曲、など様々ですが、どれを取っても「東方妖々夢」という世界をしっかり伝えてくれる素晴らしいものです。
ゲーム中でも曲名が表示され、作品全体が「名前」を大切にしていることをうかがわせます。 また、BGM鑑賞モードもしっかり装備されており、感動の名曲をいつでも楽しむことが出来ます(最終ボスとの戦いはまさに「感動」で、弾幕に見とれ、BGMに打ちひしがれ、背景の展開に驚愕し、ストーリーを感じて涙する・・・STGであんな体験をするとは思いませんでした)。

ゲームが芸術性を帯びるとき

このゲーム、製作は「上海アリス幻楽団」と書いていますが、このサークルが実は個人サークルなのだそうです。某ゲーム会社でプログラマーをされている方が個人で運営するサークルで、東方プロジェクトの作品は全て、ゲームデザイン/ビジュアルデザイン/世界設定/ゲームグラフィック/音楽/プログラムなどなどたった一人で制作されています。
その意図は「本当に好きなものを作る」という同人の原点のようなものなのでしょう。そして同時に、「ひとりで作る」ことによって東方には芸術的とも言える魅力が生まれています。
それは徹底的に構築された世界観です。ここで言う世界観とは「地球という世界」「ブリタニアという世界」「アレフガルドという世界」・・・・・という意味合いであるとともに、ゲーム自体が持つ統一性のようなもの、と思って下さい。例えば、東方妖々夢にはサブタイトルがあり、その名の通り「桜」が非常に重要なキーワードになっていますが、これを表現するためにおよそ考えつく限りのあらゆる演出が仕組まれています。
それはゲーム中のグラフィックやエフェクト類、それらを実現するプログラムもそうですし、音楽もそうですし、もちろんストーリーそのものもです。
明確に描かれた完成像に向かって、これを表現するためにどうする事が最善なのかを見極め、そして実現する。これは、ゲームに限らず良い作品を作るための必要条件だと思います。
東方の場合、「一人で納得のいくように製作する」ことで、これらの条件を満たしているのでしょう。
もちろん、本当に実現するのは半端なことではありません。ZUN氏の才能とバイタリティ、そして根気には驚かされるばかりです。

さて、このゲームには非常に素晴らしいストーリーがあるのですが、残念ながらゲーム本編ではそれらは断片的に感じられる程度に抑えられており、本編をコンプリートするとともにディスクに収録されているいくつかのテキストファイルを読むことで、初めて全体像(ここでは全体と言いつつも、実はかなりの部分が伏せられているらしい・・・・)が見え始めます。
そのあとでもう一度プレイしてみると・・・

桜は儚くそして美しく。
散り往く様に心打たれて、多くの先人達が創作の題材としてきました。
もしもゲームが「芸術」として認められるなら、これは間違いなく歴史に刻まれるべきゲームです。

ところで、このゲームのストーリーやキャラクターには心底惚れ込んでいるため、そのうち盛大にネタバレしながら暑苦しく語るページを作るかも知れません。
まあ、もうかなり前のゲームですし・・・。

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